遠野 嘉人

民俗学研究者・妖怪伝承ライター

民俗学を専攻し、日本各地の妖怪伝承をフィールドワークと古典文献の両面から研究。『今昔物語集』『画図百鬼夜行』等の原典にあたった解説を信条とします。

妖怪図鑑妖怪文化・民俗学

大学で民俗学を専攻。柳田國男・水木しげる研究を軸に日本各地の妖怪伝承をフィールドワークで調査。

遠野 嘉人の記事 (8)

妖怪文化・民俗学

岩手県遠野のカッパ淵に立つと、水辺にひそむ河童の像はどこか親しげですが、江戸期の妖怪絵巻を開くと、同じ名でも姿や気配はずいぶん違って見えます。妖怪は、そうした原典図像と現代イメージのずれごと読むと、単なる“こわいキャラクター”ではなく、その土地の自然観や不安、信仰が映り込んだ文化史として立ち上がります。

妖怪文化・民俗学

河童は日本全国の水辺に現れる怪異ですが、その姿は一枚岩ではありません。東北ではメドチ、中国・四国では猿に近いエンコウ、九州ではヒョウスベやガワッパとして語られ、呼び名だけでも80余に及びます。

妖怪文化・民俗学

天狗は、ひとつの姿に固定できる妖怪ではありません。日本での文献上の初出は日本書紀の637年にあり、そこでは山の赤ら顔の怪人ではなく、異常な天体現象を指す語として現れます。

妖怪文化・民俗学

今昔物語集と続古事談のような中世説話を横に並べて読むと、鬼は最初から角と金棒を持つ怪物だったのではなく、見えない怪異がしだいに姿を与えられていく存在だったことが見えてきます。

妖怪文化・民俗学

雪女は一つの原典から生まれた妖怪ではなく、東北・北信越・関東・西日本にまたがる口承が重なってできた総称です。広く知られる小泉八雲の物語像だけで捉えると見落としが多く、室町時代末期の宗祇諸国物語に見える古い記録までさかのぼると、その輪郭はもっと入り組んで見えてきます。

妖怪図鑑

画図百鬼夜行やその周辺の図像を実見し、複製も追っていくと、ぬらりひょんは名前と姿こそ江戸期の絵巻・画集に確かに現れるのに、肝心の説明が驚くほど少なく、解釈の余地ばかりが広い妖怪だとわかります。

妖怪文化・民俗学

百鬼夜行というと、まずは「夜の妖怪の行列」が思い浮かびますが、その言葉は説話上の怪異、絵巻に描かれた図像、さらには世の混乱を指す比喩という三つの層で読み分けると輪郭がはっきりします。

妖怪文化・民俗学

妖怪を図鑑のキャラクター名で覚えていると、日本の伝承世界の半分しか見えてきません。妖怪とは、河童や天狗のような姿ある存在だけでなく、川辺で起こる不可思議な出来事や、橋・峠・村境のような境目で立ち上がる怪異まで含む、もっと広い概念です。