遠野 嘉人
民俗学研究者・妖怪伝承ライター
民俗学を専攻し、日本各地の妖怪伝承をフィールドワークと古典文献の両面から研究。『今昔物語集』『画図百鬼夜行』等の原典にあたった解説を信条とします。
大学で民俗学を専攻。柳田國男・水木しげる研究を軸に日本各地の妖怪伝承をフィールドワークで調査。
遠野 嘉人の記事 (9)
海の怪異と妖怪—海坊主・船幽霊の伝承
海坊主、船幽霊、海難法師、磯女、磯撫では、江戸時代の怪談集や近代の民俗資料に記録されてきた海の怪異であり、海という場が恵みと死を同時に抱えることを映し出す存在である。
日本三大怪談とは|四谷・牡丹灯籠・皿屋敷の正体
日本三大怪談とは、四谷怪談牡丹灯籠皿屋敷を指す呼び名で、江戸期に成立し、歌舞伎・落語・浄瑠璃を通じて広まった三話です。四谷のお岩、皿屋敷のお菊、牡丹灯籠のお露はいずれも、信頼した相手に裏切られた薄幸の女性が怨念を残して怪となる筋を持ち、三話を貫く芯はここにあります。
雪女の怪談|物語と伝承の背景を読み解く
雪女は、雪の降る夜に現れる日本の怪異であり、白装束に白い肌、長い黒髪という姿で語られてきました。現在いちばん広く知られるのは小泉八雲怪談(1904年)の再話ですが、それは雪女譚の一形態にすぎず、青森から大分まで残る伝承を見ていくと、土地ごとに名も性格も驚くほど違います。
耳なし芳一の物語|平家の怨霊と怪談の背景
耳なし芳一は、下関の阿弥陀寺に身を寄せる盲目の琵琶法師・芳一が、壇ノ浦で滅んだ平家の怨霊に毎夜呼び出され、最後に経文を書き忘れた両耳をちぎられる怪談である。だが、この話は耳を失う結末だけが有名で、なぜ耳だけが残ったのか、いつ誰が今の形にしたのかまでは意外と知られていません。
皿屋敷伝説とお菊|物語と成立の背景
皿屋敷は、井戸のそばで女が一枚二枚と皿を数え、九枚目で泣き叫んで消える怪談の総称である。十枚揃いの家宝の皿のうち一枚が失われ、その罪を着せられた女中が責め殺されて井戸に投げ込まれる骨格を共有し、四谷怪談・牡丹灯籠と並ぶ日本三大怪談の一つにも数えられてきた。
累ヶ淵とは|怪談の物語と史実の背景
累ヶ淵は、下総国羽生村の鬼怒川沿岸を舞台に、慶長17年頃から寛文12年まで約60年にわたって続いた殺害と怨念の連鎖を語る怪談である。地名としての累ヶ淵と、助から累、そして菊と祐天上人へとつながる物語としての累ヶ淵は重なりながら少しずつ意味が異なり、その二重性を押さえると全体像が見えやすくなる。
本所七不思議とは|10話の怪談と江戸の背景
本所七不思議は、江戸の下町・本所に伝わる怪談群で、七つの名を持ちながら実際には10話前後が語り継がれてきた話です。松浦静山が本所に屋敷を構えていた当事者として甲子夜話続篇に記したこともあり、四谷怪談のような創作怪談とは違う、土地に根ざした臨場感が伝わります。
番町皿屋敷とお菊|皿を数える怪談の物語と背景
番町皿屋敷は、主家の皿十枚のうち一枚を失った下女お菊が責められ、井戸に沈んで夜ごと「一枚、二枚…」と数える声を響かせる日本三大怪談の一つです。民俗学のフィールドワークで各地の皿屋敷伝承を訪ね歩くと、誰もが名は知っていても筋を語れない怪談の代表格であり、その輪郭はむしろ原典に当たってこそはっきりします。
四谷怪談お岩さんの物語と背景
東海道四谷怪談は、文政8年(1825)に四代目鶴屋南北が書いた歌舞伎で、日本一有名な怪談と呼ばれる作品です。お岩さんと聞くと幽霊譚の印象が先に立ちますが、実体は200年前の江戸の興行物であり、怖さの正体も霊体験談ではなく、緻密に組まれた芝居の仕掛けにあります。